IABP 大動脈内バルーンパンピング

大動脈内バルーンパンピングIABP:Intra Aortic Balloon Pumping

目的

左室仕事量を軽減させる機械的補助循環法(弱っている左心の機能を一時的に補助し心臓のポンプ失調の回復を待つ方法で回復後に抜去を行う。
・心周期の拡張期にバルーンを膨らませて、上行大動脈での拡張期圧を上げ、冠・脳血流増加を増加させる。
・収縮期直前にバルーンを縮小させ、大動脈拡張期圧を減少させることにより左室からの血流駆出を容易にする。

適応
①心原性ショック
②人工心肺離脱困難時
③開心術後の低心拍出症候群
④重篤な不安定狭心症
⑤心筋梗塞の合併症の僧帽弁閉鎖不全や心室中隔欠損など
⑥ 術前: 冠動脈の重篤な狭窄や著しく左心機能が低下している例
⑦ 移植までのつなぎ
適応基準
カテコラミンを使用しても以下を満たす重度心不全
・心係数2.2L/min以下
・収縮期圧90mmHg以下
・PCWP20mmHg以上
・尿量0.5ml/kg/H以下
禁忌
①解離性大動脈瘤
②大血管損傷時
③大動脈の術後
④高度大動脈弁閉鎖不全症
⑤高度大動脈硬化症 及び 血管走行異常

合併症
・動脈解離
・動脈穿孔
・下肢虚血:女性、重症の糖尿病、著しい末梢血管閉塞症が危険因子
・感染
・血小板減少
・塞栓形成
・バルーン破裂によるガス塞栓
必要物品
①8Frカテーテルイントロデューサーキット
②IABPバルーンカテーテル
③トランデューサーキット
④ナイロン糸
⑤加圧バック
⑥圧モニターキット
⑦滅菌四角布
⑧滅菌穴あき布
⑨滅菌ガウン
⑩滅菌手袋
⑪IVHセット
⑫1%キシロカイン
⑬10cc注射器
⑭18G針・22G針・23G針
⑮イソジン
⑯消毒キット
⑰18Gサーフロ針
⑱固定具
⑲点滴代
⑳生食500CC
21ヘパリン2ml
22滅菌ガーゼ
23角4針

手順 手技 方法

事前準備
①患者さんに説明を行い鼠径部の剃毛をする
参照→剃毛方法
②ヘパリン2ml+空気を抜いた生食500mlを加圧バックにつけて300mmHgまで加圧しモニタリングキットに生食を満たす。
③モニターの画面をABPが表示できるようにして心電図モニターのリードは5電極のものを準備する
④ヘパリン生食を点滴台につけ固定具にトランデューサーを取り付ける
⑤モニターにIABP用コードを接続し準備する
⑥医師に連絡し消毒キットにイソジンを入れ医師にて穿刺部位をイソジンにて消毒する(鼠径部)
⑦医師に滅菌手袋を渡し医師が着用。
⑧医師にガウンを渡し医師のガウン着用介助を行う
⑨ワゴンにIVHセットを無菌操作で開き、ガーゼ 生食 ナイロン糸 角4針 10cc注射器 22G針 滅菌ガーゼ を開いたIVHセットの上に不潔にならないように出す。
⑩滅菌穴あきを医師に渡し滅菌四角布を医師に渡す
⑪IVHセットの上にIABPカテーテル、8Frシースを不潔にならないよう出す。
⑫医師にて局所麻酔を行う
⑬医師がシースを挿入し、カテーテルが挿入される
⑭医師がIABPを接続し駆動させる(MEのこともあり)
⑮挿入部位を持針器(IVHセット)+角4針+ナイロンを使用し医師がナート。
⑯出血がないことを確認しガーゼ・シルキーテックスにて固定する
⑰カテーテル位置確認のため胸部レントゲンポータブルを施行し医師が確認
⑱医師にヘパリン点滴を確認し指示してもらい施行する

挿入中の看護のポイント 観察ポイント 確認事項

①血行動態 末梢動脈の触知(足背動脈)
(両足背動脈を確認ししびれや疼痛動脈触知の微弱などがあらわれた場合速やかに医師へ連絡する)
②全身状態 胸部症状 バイタルサイン
③患者さんの訴え(自覚症状) しびれや疼痛
④IABPの駆動状態(圧波形や心電図)
⑤カテーテル挿入部の状態(出血・発赤・腫脹・熱感の有無)
⑥検査データ(出血傾向の有無や程度=血小板数、ヘモグロビン値、プロトロンビン時間)
⑦褥瘡の有無や予防
(体交やエアマットの使用 腰痛の緩和)
⑧精神状態や患者さんの理解度の確認や観察
(不眠が続くなど眠剤の検討を行いしっかりとコミュニケーションをとっていく)
⑨カテーテルの固定を確認(自己抜去や自然抜去予防のためしっかりとテープ固定されているか、剥がれかけていないかを確認
⑩挿入部を清潔に保つ
⑪IABPが心電図トリガーとなっている場合、電極が外れてしまうことにより駆動停止となるため外れないようテープで固定する
⑫バルーンリークの確認
管内の血液付着・逆流・ガス漏れアラームの頻回な警告・血圧低下はバルーン破裂が考えられるため医師へ報告する
⑬患者・家族にIABPの必要性・目的・方法・注意点をしっかりと説明し理解をしてもらってから処置を行い協力を得られるようにする。
(ベッド上安静が必要となることやカテーテル挿入中の足は屈曲できなくなることなど)
⑭感染兆候の観察 検査データチェック(全身の発熱、白血球数、CRP)を行い合併症の早期発見や対処を行う
⑮機器が無停電電源に接続されているか確認
⑯ヘリウムガスの残量チェック

離脱時・抜去時の看護

離脱時の指標
・収縮期圧90mmHg以上
・PCWP18mmHg以下
・心係数2.2L/min以上
・尿量0.5ml/kg/H以上
①駆動頻度を医師が徐々に下げる
・血行動態に注意
虚血性疾患=狭心症症状の有無や心電図の変化に注意
心不全=心不全兆候や心拍出量低下による症状に注意
②抜去前にヘパリン持続点滴を中止。(指示が出ない場合医師に確認)
③抜去後は医師にて十分止血をするが出血の有無や血腫の有無・足背動脈触知の確認 下肢のしびれや皮膚の色(循環動態)などに注意
④止血後ヘパリンを再開するか中止するか抗凝固剤内服にするか医師へ確認

  • 最終更新:2012-12-04 00:56:49

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